いよいよ 南座公演も 残すところ 六日となりました。
役者が語りついできた「南座だより」。今日の当番は私、前園 恵子です。

今回の私の出番はト−タルしても僅か 二、三分です。
考えようによっては、僅かしか働かず、ギャラの高い役者だなと言われています。(笑)
「五重塔」の、一幕第四場 蓬莱屋二階座敷の場に、仲居のお伝という役で出ています。

いきな三味線の聞こえる中、小さな黒塗りの丸盆に、二合徳利を二本のせて持って出る。 ふすまの外に手をつかえ、「ごめんくださいませ」と 座敷の中に声をかける。 ふすまを開けて、丸盆を持って中に入り、座って ふすまを閉め 丸盆を持って立ち、振り返り「おや……」と話しかける。想像するだけで い〜い情景だと思いませんか?!
しかし、やっている私としては恐怖の場面なんです。何故か……?!? 徳利が滑ること!滑ること!! 一歩あるくごと、動くごとに カタカタ、ツ−、ツツゥ……と いつか 徳利を倒すのではないか と思うと 心中穏やかならず なんですよ。 もちろん スマシてやってますけど……。(本人はそのつもり…)
その上、私は目が悪くて いつも舞台ではコンタクトレンズを装着しているんです。
それなのにですよ!!!
一昨日 楽屋入りして さぁ これからメイクという時に コンタクトを忘れたことに気付きました。
どうアガイたって間に合わない!!絶体絶命です。座って畳の目が見えないくらい悪い視力です。
周りの出演者に「何も見えませんからよろしく!」と お願いして(お願いされる方も困りますね)スリル満点のステージを務めました。 蹴つまずきもしない、徳利も倒さないで、事件は何も起こりませんでしたよ。
ああ 良かった!!!
《おけい》
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