おしいれのぼうけん
押入れの中はまっ暗です。
ふすまのむこうから
ゴロゴロという音と一緒にイナビカリが差し込むと、
三人の人間が小さくなっているのが見えてきました。
突然ふすまを開けると、日本髪の女がエイっと飛び出していきました。
押入れの隅に取り残されたのは、真っ黒の衣を着た女と、前髪を結った男の子の二人。
すさまじい雷鳴が響いたその時、黒い女が思い切って子どもの背中を叩きました。男の子は弾かれたように押入れから飛び出しました。
黒ずくめの女の人はホッとしたように又うずくまりました。

『五重塔』“嵐の十兵衛の場”には、たいせつなものが二つあります。
一つは押入れで、もう一つはキッカケです。
『五重塔』ご覧頂きましたでしょうか?
日本髪の女は十兵衛の女房お浪役の浜名実貴さん。子どもは、息子「猪之松」役の子役さんです。

かくいう私、高柳育子は、「付け馬の女」「三味線芸者」を早変わり(?)にて相勤めました後、子役係として黒衣姿で十兵衛さん宅の押し入れに潜んでおります。最初のうちこそ、やれ動くな、だの、飛び出せ!だのとコソコソうるさく背後からしった激励していましたが、今は安心して物思いに…イヤイヤ任務に付いております。
今回の南座公演には猪之松役の二人(ダブルキャスト)、魚屋宗五郎の「酒屋の丁稚」役の二人、計四人の子役さんが出演しています。大人でもキツイ昼夜二回公演を、楽屋でお勉強しながら頑張る四人の演技を、是非ご覧いただけますよう、押し入れの中からお願いいたします。
m(_ _)m
『おしいれのぼうけん』は、大好きだった古田足日さんの名作童話。題名をお借りしました。
